天然ガス発電ってどんな仕組みなの?
環境には優しいの?メリットやデメリットは?
今後天然ガスの利用は増えていくの?
東日本大震災の原発事故以来、
日本の電力は火力発電がメインになりましたが、燃料として、
石炭や石油以外に天然ガスが使われている事をご存知ですか?
天然ガスはもはや、
私たちの生活に無くてはならない存在となっています。
ですが自分が普段使っている電気やガスが、
どこからどのような仕組みで送られているのか、
知らない方も多いのではないでしょうか。
また、ガスは燃焼時に有害物質を発生させ環境に悪い、
というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
果たして天然ガスも環境に悪いのでしょうか。
今回は、意外と知らない天然ガスについて、
その仕組みやメリット・デメリットを調べてみました。
天然ガス発電のしくみとは?
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まずは、天然ガスがどのようなものなのか、
詳しく見ていきましょう。
〇天然ガスとは
天然ガスは、数億年〜数千万年前に海の底に沈んだ、
プランクトン等の小さな生物の死骸が変化してできた資源です。
ですから、石油や石炭と同じ、化石燃料のカテゴリに分類されます。
英語では「Natural Gas」と呼ばれ、
自然界の中に存在する可燃性のガスのことをいいます。
〇種類について
ガス田には「気体」の状態で蓄えられているものと、
「原油に溶けた形」で存在するものの2種類あり、
主成分はメタン(CH4 )です。
天然ガスは無色透明で臭いがないので、
万一漏れた時にすぐにわかるようにあえて「臭い」をつけています。
家庭用のガスといえばプロパンガスが有名ですよね。
プロパンガス(LPガス)のLPとは、
Liquefied Petroleum=液化石油のことで、
天然ガスとは全く種類が違います。
基本的に気体である天然ガスを日本に運ぶ時は、
「LNG(Liquefied Natural Gas)」と呼ばれる、
液体の状態にしてタンカーで運んできます。
(天然ガスは、-162℃で液体になります。)
体積が気体の1/600になるので、タンカーにたくさん積め、
貯蔵もしやすくなるというメリットがあります。
気体に戻す時は、海水などを利用するのが一般的です。
沸点が-162℃ですから、あっという間に気体に戻ります。
気体に戻ったガスは、
都市ガスとしてガス管を通して各家庭に送られたり、
火力発電所で電気を作るのに使われます。
天然ガス発電のメリットは?
では、天然ガス発電のメリットを見ていきましょう。
大きなメリットとして、次の4点が挙げられます。
- 環境に優しい
- 埋蔵量が豊富で供給が安定している
- 経済性に優れている
- 価格が安定している
1.環境に優しい
ガスは燃焼する時に有毒なものを発生させる、というイメージがあります。
ですがメタンを主成分とする天然ガスは、大気汚染の原因となる、
窒素酸化物や硫黄酸化物をほとんど発生させません。
また、石炭や石油などの化石燃料に比べ、
燃焼時の二酸化炭素の発生も少なく、
さらに人体に有害な一酸化炭素を含んでいないことから、
環境に優しいエネルギーといえるのです。
2.埋蔵量が豊富で供給が安定している
天然ガスは、世界各地に広く豊富に存在しており、
確認埋蔵量は約187兆m³となっています。
日本で使われている天然ガスは、
東南アジアやオセアニアなど複数の地域から輸入されており、
9割を中東に依存している石油に比べ地政学的リスクも低いのです。
可採年数(確認埋蔵量÷年間生産量)は約53年と言われていますが、
現在も新しいガス田が世界中で開発されています。
また、技術の向上により、
従来の方法では採掘が困難であったシェールガスや、
コールベッドメタンと呼ばれる非在来型天然ガスの埋蔵も、
世界中で確認されています。
天然ガスは将来にわたり安定供給が見込まれているのです。
3.経済性に優れている
天然ガスは都市ガスとして、
工場からガス導管を通じて各家庭に届けられます。
都市ガスの製造効率はほぼ100%です。
また、電線を通る電気のようなエネルギーロスが殆どないので、
経済効率性が非常に高いのです。
4.価格が安定している
天然ガスは、石油価格の乱高下に左右されません。
石油を原料としている火力発電による電気やプロパンガス、
灯油は石油価格が上昇すると一緒に料金が跳ねあがる事がありますが、
天然ガスは価格が安定しているため安心です。
天然ガス発電のデメリットは?
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では、天然ガスのデメリットはどのようなものでしょうか。
次の3点が挙げられます。
- いつか枯渇する
- 移送コストがかかる
- 貯蔵コストがかかる
1.いつか枯渇する
メリットの項で見たように、天然ガスは今後かなりの長期間に渡り、
世界のエネルギーを賄えるだけの埋蔵量があると推定されています。
しかし地球上に大量にあるとはいえ、いつか必ず枯渇する時が来ます。
永遠ではないのです。
2.移送コストがかかる
日本には天然ガス田がありませんから、海外から輸入しなければなりません。
日本に天然ガスを運ぶには、次のような設備が必要です。
- ガス田から港まで運ぶパイプライン
- 港での液化設備
- 液化した天然ガスを積み込むためのタンカー
天然ガス用のタンカーはガス田ごとに仕様が違うので、
そのガス田に合ったタンカーを造らないといけません。
また、液化するコストも買い手である日本が負担します。
これらのことから分かるように、
輸送コストはどうしても割高になってしまいます。
3.貯蔵コストがかかる
天然ガスを長期保存したいと思ったら、
液化した状態で保存しなければならなりません。
ですので、冷凍設備が必要となってきます。
しかし冷凍コストを考えると石油のように長期保存できないため、
長くても2週間程度で使い切るように計画して輸入しています。
輸送途中で事故に遭ったり、
輸出国の事情で輸送がストップしてしまうと計画が崩れてしまいます。
天然ガス発電はどのような場所に導入されているの?
天然ガスは、ガス会社が輸入して都市ガスとして各家庭に送る以外に、
各電力会社の火力発電の主原料となっています。
全国の原子力発電所が相次いで停止する中、
国内電力の8割が火力発電になりました。
そのうちの4割を占めるのが、この天然ガス(LNG)火力発電です。
東京電力では既に火力発電の約7割が天然ガスによって担われており、
他の電力会社でも今後、天然ガスの割合が増えていくことが予想されます。
世界に目を向けてみると、
天然ガス発電はエネルギー生産量の約2割を占めており、
石炭に次ぐ多さとなっています。
天然ガス発電を取り入れている上位の国は、
- ロシア ・・・ 約50%
- アメリカ ・・・ 約25%
- ドイツ ・・・ 14%
- カナダ ・・・ 10%
となっており、「脱原発」が叫ばれている国では、
今後天然ガス発電の割合が増えるでしょう。
大規模な火力発電所以外では、
各家庭での発電にも天然ガスは使用されています。
例えば、「エネファーム」と呼ばれる、
燃料電池コージェネレーションシステムは、
天然ガスから水素を取り出し空気中の酸素と化学反応させて発電し、
そのとき生まれる熱でお湯をつくるものです。
大規模火力発電所の場合、
発生した熱の大部分は捨てるしかありませんが、
エネファームはその熱を給湯に活用できるので、
エネルギー利用効率は95%と火力発電の2倍以上に達します。
天然ガス発電の環境への影響とは?
天然ガス発電のメリットで「環境に優しい」という点を挙げましたが、
もう少し具体的に見ていきましょう。
〇天然ガスがクリーンエネルギーな訳は?
天然ガスの主成分であるメタン(CH4)には、
有害な一酸化炭素が含まれていません。
また、もともと不純物が少ない上に、
-162℃まで冷却して液化する際に、
硫化水素や二酸化炭素、水分などを除去することもあって、
石炭や石油よりもクリーンに燃焼するのです。
〇他の化石燃料よりどれくらいクリーンなの?
石炭や石油よりもどれくらいクリーンなのか、
二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(Sox)の発生量を比べてみましょう。
(石炭を100とした場合)
石炭 | 石油 | 天然ガス |
|
CO2 | 100 | 80 | 60 |
NOx | 100 | 70 | 40 |
Sox | 100 | 70 | 0 |
火力発電は「タービンを回すために燃料を燃やす」
という仕組みで発電を行います。
ですので燃焼時にどうしても
二酸化炭素(CO2)が発生してしまいますが、
天然ガスは石炭の約60%に抑えられています。
光化学スモッグの原因となる、
窒素酸化物(NOx)の発生も40%と半分以下です。
大気汚染や酸性雨などの原因となる硫黄酸化物(Sox)に至っては、
全く発生しません。
〇石炭や石油に比べて発電所のスペースがコンパクト
天然ガスの発電所は、
石炭や石油のものに比べてコンパクトなスペースで済むので、
都心の近くに発電所を作ることもそれほど難しく有りません。
都心に近いほど発電時に作られた熱を再利用することが可能になりますので、
その点でも環境に優しいといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
天然ガスは都市ガスとして使われるほか、
火力発電の主原料としても使われています。
他の化石燃料である石炭や石油に比べて、
燃焼時に出る有害物質が少なく、環境に優しいため、
今後火力発電の主役となるのではないでしょうか。
環境面以外にも、
- 埋蔵量が豊富で供給が安定している
- 経済性に優れている
- 価格が安定している
などのメリットがありますが、
移送や貯蔵にコストが掛かることがデメリットです。
また、埋蔵量が豊富とはいえ、
いつか枯渇してしまう燃料であることを忘れてはいけません。
代替エネルギーを模索しながら、利用することが必要でしょう。